医療法人甲会事件(札幌高判平25・11・21) 業務終了後の高度検査技術習得のための自習時間は 時間外労働と同視するべき
新人の臨床検査技師がうつ病を発症し自殺したのは、安全配慮義務違反が原因として遺族が損害賠償を求めた。残業や業務終了後の自習時間の増加は一時的で発症の予見は困難とした一審に対し、札幌高裁は、難度の高い検査技術習得のための自習は業務と関連し時間外労働と同視されるとしたうえで、負荷軽減措置を怠ったとして請求を認容。
新人技師の自殺で 業務との関連あり
筆者:弁護士 牛嶋 勉(経営法曹会議)
事案の概要
Aは、被告(医療法人)に平成21年4月1日から雇用され、臨床検査技師として勤務していたが、同年10月17日、自宅において自殺した。控訴人両名(Aの両親。一審原告・控訴人)は、被告に対し、安全配慮義務違反に基づく損害賠償を請求した。なお、函館労基署長は、控訴人による労災請求に対し業務上と認定している。
第一審の札幌地判(平24・8・29)は、労働者の心身の健康が損なわれて何らかの精神疾患を発症するおそれがあることについて、具体的客観的に予見できることを要するところ、Aの業務等の遂行に伴う疲労や心理的負荷等が過度に大きなものであったとは断じがたいうえに、Aの心身の健康が損なわれて何らかの精神疾患を発症するおそれがあることについて、具体的客観的に予見することはできなかったとして、被告は、臨床検査科に適正な人員配置措置をとることで人員不足を解消し、またAに対し職場内での滞在時間について注意喚起を行うべきであったとまではいえないと判断し、原告の請求を棄却した。本件は、その控訴審である。
判決のポイント
本件自殺の1か月前…では、本件残留時間(筆者注、認定された終業時刻からタイムカードに打刻された終業時刻までの時間)のうち本件終業準備時間を除く部分の大部分は…
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