リコー出向事件(東京地判平25・11・12) 退職勧奨に応じない社員に対する出向命令の効力は 退職期待の権利濫用に該当 ★
2014.05.26
【判決日:2013.11.12】
退職勧奨を拒否した者に対し子会社へ出向を命じたのは権利濫用で無効として、50代の従業員らが訴えた。東京地裁は、出向命令は退職勧奨を断った者が翻意し、退職することを期待して行われたもので、余剰人員の人選基準は合理性を欠くこと、経歴や年齢に配慮した異動とはいえず身体的、精神的な負担が大きいことから出向命令を無効とした。
不当な動機で無効 人選に合理性ない
筆者:弁護士 石井 妙子(経営法曹会議)
事案の概要
Y社は、各部門6%の割合で余剰人員を選定し、該当社員に対して希望退職への応募を勧奨した。9割近くが希望退職に応募したが、応募しなかった者(X1、X2を含む約150人)に対しては子会社への出向を命じた。
Xらは、技術系の業務から子会社の物流現場への出向を命じられ、担当業務は、立ち仕事や単純作業が中心であったが、出向に際して、人事上の職位、賃金額の変更はなく、就業場所も自宅からの通勤圏内であった。
Xらは、本件出向命令は出向命令権の濫用として無効であるなどと主張して、Yに対し、①出向先において勤務する労働契約上の義務が存在しないことの確認、②労働契約上の信義誠実義務違反および不法行為に基づく損害賠償請求として、各220万円と遅延損害金の支払い、③退職強要行為または退職に追い込むような精神的圧迫の差止めを求めて提訴した。判決では、出向命令は人事権の濫用として無効としたが、②③は棄却した。
判決のポイント
1 出向命令権の有無…
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平成26年5月26日第2970号14面 掲載