乙山商会事件(大阪地判平25・6・21) 私物の外付けHDDでデータ無断持ち出し懲戒解雇 情報漏えいの事実なく無効
私物のハードディスクに取引先の情報を記録し無許可で持ち帰ったとして、懲戒解雇された元従業員が地位確認などを求めた事案。大阪地裁は、懲戒解雇事由の解釈は厳格に運用すべきで、情報流出の危険性を生じさせただけで「外に漏らさないこと」に違反したと同視できないと判示。また、「事案が重篤なとき」にも当たらず解雇無効とした。
危険性生じただけ 拡大解釈許されず
筆者:弁護士 山田 靖典(経営法曹会議)
事案の概要
Xは、Y社が平成22年4月にM社を吸収合併する以前から、業務上使用するM社のパソコンに、私物である外付けのハードディスクドライブ(以下、HDDという)を接続して使用していたが、平成24年1月頃、平成22年4月から平成23年12月までのY社の取引に関する商品販売先の社名、担当者名、連絡先、交渉経過のメモ、受注数量、単価などの情報が記録されたHDDを自宅に持ち帰った。
Y社は1月17日、Y社の就業規則所定の会社の業務上の機密及び会社の不利益となる事項を外に漏らさないこと(29条4項)、従業員は出社及び退社の場合において日常携帯品以外の品物を持ち込みまたは持ち出そうとするときは所属長の許可を受けなければならないこと(31条)に違反したとして、Xを懲戒解雇した。
そこで、Xは懲戒解雇が解雇権の濫用であり無効だとして、Y社に対し雇用契約上の地位の確認、解雇後の賃金、違法・無効な懲戒解雇による慰謝料の支払いなどを求めて提訴した。…
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