アークレイファクトリー事件(大阪高判平25・10・9) 派遣先で「行き過ぎた指導」、パワハラと訴えられる 逸脱あるが強い害意はない
派遣労働者のミスに対する監督者らの「殺すぞ」「あほ」などの叱責について、派遣先の使用者責任を認めた事案の控訴審。大阪高裁は原審同様、監督者の言動は度を超すとして不法行為と認定。使用者責任も認めつつ、問題の言辞に強い害意はないとして慰謝料50万円を30万円に減額するとともに、一審認容の派遣先の不法行為責任も否定した。
慰謝料30万円に減 先の不法行為否定
筆者:弁護士 岩本 充史
事案の概要
本件は、派遣労働者Xが派遣先Yの従業員ら(F、E=ライン監督者)からいわゆるパワーハラスメントに該当する行為を受け、同派遣先での就労を辞めざるを得なくなったと主張して、Yに対し、使用者責任およびY固有の不法行為に基づく損害賠償として、慰謝料200万円などの支払いを求めた事案である。
一審(大津地判平24・10・30)は、Yの従業員ら2人の言動(①XはFから作業の指示を受けたが、Eは作業を止めろと指示したところ、Fから命令違反だと言われたこと、②Fから叱責を受けたこと、③Fからわざと生産効率を落とすよう言われたこと、④Xが年休取得の意向を示したところ、Fは出勤を、Eは「来んでいい」と逆の指示をし、Xに不安を与える言動をしたこと、⑤Fが、指示に従わなかったXに対して「殺すぞ」と発言したことなど)をいずれも悪質であるとして慰謝料50万円、YがXの苦情申出までに従業員らを指導教育していなかった点を固有の不法行為に該当するとして30万円、弁護士費用として8万円(計88万円)およびこれに対する遅延損害金の限度で認容し、その余を棄却したので、これを不服とするYが控訴し、Xが附帯控訴したものである。…
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