X建設事件(東京地判平25・9・27) 労災隠しで元請責任者を諭旨退職させ退職金2割減 勤続の功を減殺する背信性
下請の労災事故を隠ぺいし諭旨退職処分とされた元請の事務所長が、退職金の2割減額は無効と提訴。東京地裁は社内基準で定める事故報告を怠ったほか、被災者の雇用主に保険給付を請求するよう指示せず、処分には合理的理由があると判示。過去の労災隠しを受け厳罰化を周知しており、30年の勤続の功を減殺するほどの背信性を有するとした。
事故報告提出せず 再発防止で厳罰化
筆者:弁護士 渡部 邦昭(経営法曹会議)
事案の概要
労働者甲は、昭和55年4月1日、会社(X建設株式会社)との間で労働契約を締結しそれ以降、会社の従業員として稼動していたが、会社は、平成23年1月11日、会社の就業規則(本件就業規則)58条1号などに基づき、甲を諭旨退職処分、退職金20%を不支給とする旨の退職金一部不支給処分をした。
会社は、その理由について、「今般、東京駅YビルⅠ期新築工事において、平成19年6月に作業員3人が被災した事故に関し、A社が虚偽の労働者死傷病報告を行い、かつその後における労働基準監督署等からの当社への問い合わせに対し、当社が誤った回答を行っていたことが判明した。当時、貴職(甲のこと)は本件工事の工事事務所の長として、所管工事全般に関する責任を負うとともに、犯罪行為である労災隠しを防止すべき立場にあったにもかかわらず、一連の行為を総合すれば、A社等による労災隠しを終始認容するとともに、労災事故発生の事実を隠ぺいし続けていたものと認められることはまことに遺憾である」と述べた。
甲は、会社に対し、平成23年1月31日をもって退職を願い出る旨の同月31日付け退職届けを提出した。…
この記事の全文は、労働新聞の定期購読者様のみご覧いただけます。
▶定期購読のご案内はこちら