X社事件(東京地判平25・9・25) 支店長が着替え盗撮、防止義務怠り使用者に責任? 職務執行と密接な関連なし
支店長に更衣室を盗撮された女性が、防止義務を怠ったとして使用者責任に基づく損害賠償を求めた。東京地裁は、盗撮は自らの欲望を満たす行為で職務執行と密接な関連性はないと判示。犯罪行為をしないことは従業員の当然の責務で、会社に盗撮を予測し防止する義務はなく、盗撮の裏付けを得て解雇するなど適正対処義務にも反していないとした。
犯罪で予測もムリ 適正に調査し処分
筆者:弁護士 牛嶋 勉(経営法曹会議)
事案の概要
土木建築業を営む会社(被告)に雇用されていた原告は、会社に対し、会社が雇用していたBが職場で原告の着替えを盗撮したことに関し民法715条1項に基づき、会社が被用者の盗撮行為を防止すべき雇用契約上の義務を怠ったとして民法415条に基づき、また、盗撮発覚後に会社は事実をもみ消そうとするなどの不誠実な対応をしたとして同条に基づき、慰謝料200万円等の支払いを請求した。
判決のポイント
「事業の執行につき」とは、使用者の事業ないし被用者の職務の範囲内に属する行為、ないしは、その外形を備えている行為をいう。…原告は、被告千葉支店のロッカー室において、直接の上司であった千葉支店長のBから、私服から事務服に着替える様子をビデオカメラで撮影される被害を受けたことが認められるが、Bの本件盗撮行為は、原告が着替えをする姿を見たいというBの欲望を満たす行為であって、事業上の必要性に基づくものではなく、その態様も、被告の業務用のビデオカメラを使用しているものの、原告に気付かれないよう隠し撮りをするというものであって、…
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