国・尼崎労基署長(園田競馬場)事件(大阪高判平24・12・25) “ストーカー警備員”に刺殺された受付嬢の労災は? 「職務に伴う危険」が現実化
職場の警備員からのストーカー被害に遭い、殺された競馬場の女性案内係の労災が不支給となった事案。私怨として処分取消請求を斥けた一審に対し大阪高裁は、マスコットガール的存在の女性にストーカー的行動をすることも予想できないわけではなく、職務に内在する危険性と評価。苦情申出を逆恨みし暴行に及んだもので業務起因性を認めた。
苦情いわれ逆恨み 私怨の判断を覆す
筆者:弁護士 石井 妙子(経営法曹会議)
事案の概要
本件の被災者(以下「一子」という)が、兵庫県競馬組合S競馬場において、マークレディ(S競馬場において馬券購入のためのマークシートの記入方法等を案内する担当係員)として勤務していたところ、警備員として勤務していたCは、一方的に一子に好意を持ち、5分間隔や、1時間間隔で電話をかけるなどストーカー的行為に及び、あげく一子がCの上司に苦情の申出を行ったことなどを逆恨みして、一子の殺害を決意した。当初、マンションなどで待ち伏せしたが、失敗したので、通勤してきたところを狙って職場で刺殺するにいたった。
なお、一子はD社に、CはE社に雇用され、各社がそれぞれ競馬組合から受託した業務に従事していた。そこで、民事責任に関しては、Cを雇用していたE社が、一子の相続人に損害賠償を支払っている。
本件は、一子の遺族が、労災保険給付請求に関し、本件災害はCの私的感情により引き起こされたものとして、労災保険を不支給とした労基署長の処分の取消しを求めた事案である。原審(神戸地判平24・3・23)は、業務起因性は認められないとして遺族の請求を棄却し、遺族がこれを不服として控訴した。…
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