X社事件(広島高判平25・7・18) 主任の登用割合に男女差、昇格で女性差別と訴える 人事考課制度の客観性確保
昇格・昇進で女性差別を受けたとして、会社に損害賠償などを求めたが棄却されたため控訴した。広島高裁は、同期同学歴の男性の9割が主任に昇格し格差は認められるが、人事権の行使として昇格には広範な裁量があるほか、考課基準は公表され二次評定者が再検討するなど考課の客観性が確保されていると評価。差別には当たらないとした。
基準を作成し公表 二次評価で再検討
筆者:弁護士 緒方 彰人(経営法曹会議)
事案の概要
控訴人は、昭和37年生まれの女性であり、昭和56年4月、事務系の従業員として、被控訴人に雇用された。
被控訴人は、昭和61年10月から、人事制度として職能等級制度(いわゆる職能資格制度)を採用したが、その職能等級は、平成11年10月以降は、一般管理職(管理1級から3級)と一般職(主任1級と2級、主務1級から4級と主務補)とに区分されている。この職能等級は、賃金のうちの基本給などに連動しているが、役職(職位)とは必ずしも対応関係になく、また昇格は、人事考課(業績考課と能力考課の評定結果を総合して判断)に基づき行われる。
控訴人は、昭和61年10月、職能等級制度の導入により、主務2級となり、平成3年4月に主務1級、平成10年4月に主任3級に昇格し(平成11年10月には制度変更に伴い主任2級に移行)、平成17年10月、新たに導入されたクラス制度により、主任2級クラスⅡとなり、平成20年10月に同級クラスⅠ、平成24年10月には、主任1級クラスⅢに昇格した。
しかし同期同学歴の事務系男子従業員との昇格スピードに差があったため、控訴人は、被控訴人に対し、女性であることを理由に不当な昇格差別を受けたとして不法行為に基づく損害賠償金の支払いを求めた。…
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