プレナス事件(東京地判平25・6・5) 退職勧奨拒めば懲戒解雇と誤解、退職の無効訴える 錯誤を生じさせる言動なし
退職勧奨に応じなければ懲戒解雇になると誤解したとして、人事部職員が退職は錯誤無効と提訴。東京地裁は、会社も職員も解雇の可能性や勧奨に応じなかった場合の処遇に言及せず、動機の錯誤に過ぎないと判示。退職願が出されるまで1週間以上の期間があり意思表示が真意に基づかないとはいえず、強要ともいえないとして請求を斥けた。
1週間考慮し届出 強要ともいえない
筆者:弁護士 渡部 邦昭(経営法曹会議)
事案の概要
会社は、飲食店の経営などを目的とする株式会社であるが、平成16年3月にB亭を吸収合併した。労働者甲は、平成8年にB亭との間で雇用契約を締結した者であるが、本件退職願提出前は、会社の東京事務所で人事部労務厚生課サブリーダーとして勤務していた。会社は、平成24年適格退職年金制度が廃止されることとなったため、確定拠出年金制度への移管手続きを進めており、平成23年9月1日、従業員各人に退職金予定額を通知した。
甲は、退職金予定額に対する不服から、同日、B亭に在籍していた上長、同僚など約20人に対し、「今回の退職金の件ですが、例として勤続15年の元B亭社員の退職金は中途退職一時金204万円…でした。みなさんどう思われますか。ちなみに、退職金規程ではP社員として記載されており、その内容で計算すると500万円以上となります」などと記載した本件メールを送付した。
甲は確定拠出年金制度への移行に関する説明会などの担当者であったが、会社の人事部では、甲に、本件メールを送付するような甲には担当者は任せられない旨通知するとともに、A部長は、平成23年9月3日、出頭した甲に対し退職勧奨を行い、甲は9月14日、本件退職願を提出した。…
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