ヒロセ電機事件(東京地判平25・5・22) 入退館記録表の打刻時刻を労働時間として割増請求 「残業命令書」に基づき計算
職場への入退館時の打刻記録を労働時間として残業代などを求めた事案。東京地裁は、事業場にいる間は特段の事情がない限り労働時間と推認すべきだが、運用上、従業員の希望を踏まえ上長が毎日個別具体的に時間外勤務命令書により残業を命じているなど、残業時間の認定は命令書によるべきと判断。退館まで指揮命令下にあったとはいえないとした。
時間外の希望確認 日々具体的に指示
筆者:弁護士 牛嶋 勉(経営法曹会議)
事案の概要
本件は、被告に勤務していた原告が、時間外労働および深夜労働に対する割増賃金と労働基準法114条に基づく付加金の支払いを求めるとともに、内容虚偽の労働時間申告書等を原告に作成、提出させたとして不法行為に基づく損害賠償を求めた事案である。
原告の主張は、①事業場外で業務に従事する場合であっても、労働時間の算定が可能であるので、事業場外労働のみなし制の適用はない、②被告では、労働者の労働時間の管理を「入退館記録表」で行っていたので、入退館記録表に記録されている入館・退館時刻の差が労働時間であるなどであった。
判決のポイント
原告の出張や直行直帰の場合に、時間管理する者が同行しているわけでもないので、労働時間を把握することはできないこと、直属上司が原告に対して、具体的な指示命令を出していた事実もなく、…被告の原告に対する具体的な指揮監督が及んでいるとはいえず、労働時間を管理把握して算定することはできないから、事業場外労働のみなし制(労基法38条の2第1項)が適用される。…
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