日本郵便事件(東京高判平25・7・18) 休日に飲酒運転の事故で罰金、解雇され退職金は? 勤続の功減殺し3割を認容
休日の酒気帯び運転の事故で逮捕、罰金刑に処せられ懲戒解雇された郵便局員が、退職金不支給は無効と提訴。7割減額とした一審を不服として控訴した。東京高裁は一審を踏襲し、物損事故であり事業に信用上や営業上の損害は生じていないなど、26年の勤続の功を抹消するほど重大な不信行為とはいえず、約3割の400万円を退職金と認容した。
人身ではなく物損 営業上の損害なし
筆者:弁護士 山田 靖典(経営法曹会議)
事案の概要
郵便事業会社(Y社)の社員Xは平成20年12月7日、政令で定められた量を上回るアルコールを保有した状態で自動車を運転(酒気帯び運転)して、物損事故を起こし現場から逃走した。同日逮捕されて罰金50万円に処せられ、新聞でも報道された。Y社は平成21年3月31日、酒気帯び運転などを理由にXを懲戒解雇し退職金を支給しなかった。
XはYに対し、主位的に懲戒解雇が無効だとして地位確認などを、予備的に懲戒解雇が有効だとしても退職金約1320万円などの支払いを求めて提訴した。一審判決(東京地判平25・3・26)は、懲戒解雇を有効としたうえで、退職金請求については400万円の支払いを認容した。
Xは懲戒解雇が有効とされた点を、Y社は退職金の一部支払いが認められた点を不服として控訴した。
判決のポイント
Y社のXに対する懲戒解雇は有効である。
Y社での退職金は、賃金の後払い的な意味合いが強いというべきであるから、懲戒解雇されたことのみを理由として退職金を支給しないことは許されない。労働者の行った非違行為によって、それまでの永年の勤続の功が抹消されるといえるような場合には、退職金を支給しないことができるが、それまでの永年の勤続の功が抹消されるとまではいえない場合には、…
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