兵庫県労委(川崎重工業)事件(神戸地判平25・5・14) 派遣先に直用化を要求、団交応諾義務なしの判断は 労働条件の支配力有さない
派遣受入期間を超えるとして派遣先に直接雇用を求めて団交を申し入れたが拒否された労組が、不当労働行為ではないとした労委の処分の取消しを求めた。神戸地裁は派遣先が労働条件を支配決定できる場合は使用者に当たるが、採用の自由があり雇用申込義務を怠っても指導などにとどまるなど雇用関係が成立する可能性はなかったとして請求を棄却。
雇用見込みはなし 「使用者性」を否定
筆者:弁護士 岩本 充史
事案の概要
労働組合であるXに所属する組合員は、甲工業株式会社などに雇用されて、労働者派遣契約や請負契約に基づき、鉄道車両の製造などを業とする会社(補助参加人)の工場で就労していた。補助参加人は、操業度が落ち込んだことを理由として平成21年11月から同年12月にかけて派遣契約などを中途解除したため、甲はX組合員らを解雇した。
Xは派遣受入期間の制限に抵触しているなどとして、補助参加人に対しX組合員の直接雇用を求めて団体交渉を申し入れたところ、補助参加人は、①X組合員とは直接の雇用関係にないこと、②X組合員の労働条件を決定する権限を持たないことから応じられない旨回答して団体交渉を拒否したため、この行為が労働組合法7条2号(誠実交渉義務違反)の不当労働行為に当たるとして、処分行政庁に対し不当労働行為救済命令申立てを行った。処分行政庁は、補助参加人はX組合員の使用者に当たらないと判断して申立てを棄却する命令をした。
本件は、Xが本件命令を不服としてその取消しを求めた事案である。争点は、団体交渉に係る補助参加人の使用者性の有無である。…
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