X銀行事件(東京地判平25・2・26) 能力・成果主義で賃金6%減、不利益変更と訴える 激変緩和の追加措置を評価
経営状況の悪化から能力・成果主義へ賃金体系を変更され、俸給が約6%減額したとして、銀行の事務員が就業規則の不利益変更と提訴。東京地裁は、不利益は大きいが、俸給額は全国的にみても高いうえ公的資金を返済していないなど減額の高度の必要性を認容。5%超の減額に調整給の追加措置を講じ、労組も応諾するなど変更の合理性を認めた。
他行より俸給高い 労組は新制度応諾
筆者:弁護士 緒方 彰人(経営法曹会議)
事案の概要
被告は、長期信用銀行法に基づき設立されたY銀行をその前身とする銀行であるが、平成10年12月、預金保険機構による特別公的管理開始決定を受け事実上経営破綻した。平成12年9月に特別公的管理は終了したものの、被告は平成12年10月に整理回収機構に対し総額2600億円の優先株を割当て同額の公的資金の注入を受けた。
そのため被告は、経営合理化を進め、平成17年から同18年にかけて、成果主義・能力主義的賃金制度を導入したが、等級ごとの俸給額について上限と下限を設けており、一部、年功序列的な運用が温存されていた。
平成20年9月のリーマン・ショックによる影響を受けて被告の経営状況は再び悪化し、平成21年7月、被告は金融庁から2度目の業務改善命令を受けた。このようななか本件優先株の普通株式への強制転換日(平成24年10月3日)が迫ってきたが、平成23年時点で被告は2000億円を超える公的資金を完済し得る目途はなかった。
そこで、被告は、平成23年7月1日、従前の賃金制度を改訂し(以下「本件就業規則変更」という)、等級ごとに幅のあった俸給額を、一律の金額とし、成果主義・能力主義を徹底させることにより人件費(約3億円)の削減を図った。…
この記事の全文は、労働新聞の定期購読者様のみご覧いただけます。
▶定期購読のご案内はこちら