パナソニックエコシステムズ事件(名古屋高判平24・2・10) 派遣に知識伝授させ契約打切り、賠償命じた判断は 原審の認定額を妥当と判示
派遣労働者が専門知識を正社員に伝授したところ派遣切りされ、一審は派遣先に賠償を命じたが双方が控訴。名古屋高裁は、契約打切りに至った事態の説明責任について、道義上のものでなく法的義務と認めるのが相当とした。派遣先の不法行為責任を追認し、慰謝料も妥当と判示。地位確認請求については、違法派遣でも雇用契約成立とみなす法的根拠はないとして退けた。
不法行為責任負う 雇用契約は不成立
筆者:弁護士 石井 妙子(経営法曹会議)
事案の概要
X1、X2は、Y社に派遣されて就労していたが、平成21年3月末日、派遣元において雇止めとなった。Xらは、Y社との間で、黙示の無期雇用契約が成立していたと主張し、Y社に対して雇用契約上の地位確認および賃金支払いを求めるとともに、Y社が、実質的雇用主であることを隠蔽し、適法な派遣労働の期間満了終了であるかのように取り繕っていることなどは、不法行為に該当するとして慰謝料300万円を請求した。
一審(名古屋地判平24・2・10、本紙第2863号)は、Y社と直接雇用が成立しているとの主張は退けたが、事案の内容に照らして、不法行為が成立するとした。X1、X2にそれぞれ慰謝料として100万円、30万円を認容したが、Xら、Y社ともに控訴した。本件は、その控訴審である(なお、各控訴棄却を受けY社は上告したが、上告は棄却、上告受理申立ても不受理に最決平24・10・12)。
判決のポイント
1 直接雇用の成否
派遣法違反の労働者派遣が行われていたこと…、直接雇用申込み義務発生後においても就労を継続したことを理由とする黙示の雇用契約の成立の主張については、一審同様、黙示の雇用契約が成立するといえる事情はいまだ認めるに足りないし…Xらの主張は、…
この記事の全文は、労働新聞の定期購読者様のみご覧いただけます。
▶定期購読のご案内はこちら