日本ヒューレット・パッカード事件(東京地判平24・7・18) メンタル不全訴える従業員を勤務態度不良と解雇へ 労務軽減必要な症状でない
パワハラやメンタル不全を訴える従業員を勤務態度不良で解雇したところ、適切な対応を怠ったとして解雇無効と訴えられた。東京地裁は、労務軽減が必要な健康状態とはいえず、約3年も上司らの注意・指導を聞き入れず改善が見込めないことから、就業規則所定の解雇事由に当たると判示。パワハラの事実はなく、解雇は社会的相当性を欠くものとはいえないとした。
改善の見込みなし 注意や指導聞かず
筆者:弁護士 緒方 彰人(経営法曹会議)
事案の概要
被告は、電子計算機などの製造販売などを目的とする会社である。
被告の従業員であった原告は、平成18年8月1日から平成21年6月までの間、被告の製品プライスリストであるFRUリストの更新業務やウエブサイトのシステム移行を含むウエブサイトの管理業務などを担当していたが、その間、例えば、①FRUリストに誤情報を掲載し顧客から指摘を受けても、適切に対応せず、そのため顧客から原告の交替を含めたクレームが寄せられた、上司からの改善指示や提案を受けても受け入れようとしない、②①の件にて上司が顧客に謝罪を行おうとすると、中止するよう要請したり、被告の倫理委員会に顧客からのクレームはでっちあげであると申立てたりしたほか、顧客に対し被告の倫理委員会から問合わせなどが入っていないかという電話をかけたりする、③ウエブシステムの移行作業を期限の前日の夕方になっても全く手をつけていない、④残業する場合は事前に申請するよう指示しても従おうとせず、上司からの最初の指摘から7カ月後になってようやく事前申請を行うようになる、⑤…
この記事の全文は、労働新聞の定期購読者様のみご覧いただけます。
▶定期購読のご案内はこちら