本田技研工業事件(東京高判平24・9・20) 不更新条項付き契約に署名、雇止め有効の判断は? 継続雇用の期待利益を放棄
不更新条項付きの有期雇用契約による雇止めを有効とした一審を受けて、自動車メーカーの期間工が控訴。東京高裁は、従前は期間満了後に退職させ再入社させていたが、減産に伴いこれまでとは異なる雇止めである旨を説明し、期間工はそれを真に理解し、自由意思に基づき契約更新したもので雇用継続の合理的期待を放棄したと判示。一審同様に解雇法理の類推を否定した。
従前との違い認識 自由意思に基づく
筆者:弁護士 渡部 邦昭(経営法曹会議)
事案の概要
甲(控訴人)は、会社(被控訴人)との間で、平成9年12月1日から20年11月末まで概ね3カ月以下の有期雇用を締結、更新し、約1年ごとにいったん退職し、1週間ないし1カ月の空白期間を経過後再入社を繰り返してきた。
この間の有期雇用契約書には、「会社は甲の承諾を得て本契約を更新することがある。更新の有無については、前項の契約期間の満了時において以下の①ないし③の基準により会社が判断し、その有無を決定する。①契約期間満了時の業務量により判断する。②甲の勤務成績、勤務態度により判断する。③甲の勤務能力により判断する」旨の更新条項(ただし、雇用契約を締結した日から3年間を上限とする)の定めがあった。
しかし、雇止め直前の平成20年9月29日に会社と甲の間で締結された有期雇用契約は、「本更新は、前項の定める期間の満了をもって終了とし、契約の更新はないものとする」旨の「不更新条項」の定めがあった。
甲は、不更新条項は公序良俗(民法90条)に違反し無効、退職の意思表示は錯誤無効(民法95条)であり、雇用契約更新への合理的期待があったとして訴えを提起した。…
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