ライトスタッフ事件(東京地判平24・8・23) 分煙を求めた営業マンが試用期間中に解雇され提訴 留保解約権の濫用的な行使 ★
試用期間中に受動喫煙で体調を崩した保険営業マンが、社長に分煙を求めたところ解雇され提訴。東京地裁は、解雇権濫用法理の枠組を大きく逸脱する解約権行使は認められないと判示。休職中に必要な連絡を怠り就業規則の解雇事由に当たるが、能力など適格性を見極めず、分煙要求を疎ましく思う余り解雇したのは拙速で、解約回避措置を講ずべきとして解雇無効とした。
適格性抜きに判断 回避措置講ずべき
筆者:弁護士 緒方 彰人(経営法曹会議)
事案の概要
被告は生命保険の募集業務等を業とする会社であり、原告は平成21年11月9日、保険外交員として勤務すべく試用期間(3カ月間)付けで被告に入社した。
試用期間中である平成21年12月14日頃から原告は被告のB社長に対し体調の異変を訴えその原因がB社長の受動喫煙のせいであると主張し分煙措置を講ずることを求めたところ、同月25日、B社長より、それほど煙草が嫌いであれば、退職するか、解雇されるか、あるいは1カ月休職して体調が回復するか様子をみるとともに体調異変の原因が同社長の喫煙によるものか専門医の診察を受け因果関係をはっきりさせるか、という3つの選択肢を提示された。この時点で原告は退職するつもりはなかったため、原告は1カ月間の休職という選択肢を選択した(以下「本件休職合意」という)。その結果、原告は、同日午後から休職となったが、その際、原告は被告から、貸与中のパソコンの使用を禁じられたほか、被告事務室の鍵や名刺の返上を求められた。
同月28日原告は、受動喫煙の専門医の診察予約が取れたことを被告に連絡するために電話をしたが、B社長の剣幕に押され診察予約のことを報告することができなかった。それ以降、1カ月近くにわたって、原告は被告に対して連絡を行わなかった。…
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