コアズ事件(東京地判平24・7・17) 10人雇う”特命”達成できず中途採用の営業部長クビ 恣意的な人事で裁量権濫用
中途採用の営業部長が、新人10人を雇う「特命」を達成できず、給与減額や降格後に解雇され処分無効と提訴。東京地裁は、30万円を超える減額の不利益は甚大で、他方、採用業務につき書面上の合意もなく帰責性は認められないと判示。降格についても、減給同様に恣意的な人事で裁量権濫用とした。減給や降格の有効性を基礎付けられない以上、解雇は無効と断じた。
書面合意なかった 帰責性認められず
筆者:弁護士 山田 靖典(経営法曹会議)
事案の概要
Xは平成20年2月、警備業などを業とするY社に月給80万円(交通費は別途支給、以下同じ)で入社し、東京営業本部の営業開発部長として2人の部下が配属され、新規顧客の開拓のほか同年8月までに営業部員10人を採用することになった。
Xは6月に新入社員として6人を採用しようとしたが、Y社の甲社長に承認されなかった。また、8月ころDが東京事業本部長に就任してからは、Dの部下として業務に従事し、9月にDの同意を得て2人を採用しようとしたが、甲の承認を得られなかった。
ところで、Xは平成21年3月から月給が46万7040円に減額された。4月には、関連3社の合併に伴い、Xは第一営業部の営業部長となった。平成22年4月、Xは部下のいない「独任官」と称する地位に降格され、6月から月給が44万7040円に減額された。そして、Xは甲と7月15日、処遇に関して面談したが、不調に終わり、XはY社を解雇された。
そこで、Xは右の降給、降格、解雇が無効だと主張して、営業開発部長としての雇用契約上の地位確認、減額分の差額賃金などの支払いを請求して提訴した。
判決のポイント
賃金が労働者にとって最も重要な労働条件の一つであるから、給与規程の定めがあるとはいえ、賃金の減額が許容されるのは、労働者側に生じる不利益を正当化するだけの合理的な事情が必要である。…
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