M社(セクハラ)事件(東京高判平24・8・29) 社長から強姦されたと提訴、合意の上との判断は!? 自由意思でなく人格権侵害 ★
内定先でアルバイトしていた女子大学生が、社長らに性的関係を強要され損害賠償を求めた事案の控訴審。一審は合意の上としたが、東京高裁は、立場を利用した行為で、自由意思に基づく同意は認められず性的自由や人格権の侵害と判示。社長は実質的には被用者で、女性宅を訪ねた行為は事業執行と関連があるとして会社の使用者責任を認容。連帯して支払いを命じた。
立場利用した行為 会社に使用者責任
筆者:弁護士 牛嶋 勉(経営法曹会議)
事案の概要
控訴人X(一審原告、女性)が、被控訴人M社(一審被告)の従業員としてA店で勤務していたところ、M社の代表者であった被控訴人乙山(一審被告)およびA店店長であった被控訴人丙川(一審被告)によって強姦されたなどとして、M社、乙山、丙川に対し、不法行為に基づき、慰謝料など損害賠償の支払いを求めた事案である。
M社は、質屋業などを目的とする株式会社である。Xは、大学卒業前に、実家のあるB県からC府に引越し、平成19年10月からアルバイトとして、20年1月から正社員として、A店の従業員として稼働していたが、20年3月、B県の実家に戻り、同年4月付でM社を退職した。
本件の争点は、①乙山の加害行為の成否およびM社の使用者責任の成否、②丙川の加害行為の成否およびM社の使用者責任の成否などである。
一審判決(東京地判平24・1・31)は、争点①について、「Xと乙山との性交渉は合意の上で行われたものと認めるのが相当である」とし、争点②についても、「Xと丙川との性交渉は合意の上で行われたものと認めるのが相当である」として、Xの請求をいずれも棄却した。Xは、これを不服として控訴した。…
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