萬屋建設事件(前橋地判平24・9・7) 労働時間は自己申告制、残業制限し過労死の責任は 実態調べず把握義務怠った
残業や休日労働の自己申告制を採る建設会社の現場責任者がうつ病で自殺し、過重労働が原因か争った事案。前橋地裁は、申告と実時間が合致するか調査し健康状態を悪化させないようにする義務(労働時間把握義務)を負うと判示。月24時間を超える残業の申告を認めず義務を懈怠していたとしたうえで、業務の過重性を認識し自殺は予見可能として損害賠償義務を認めた。
過重性を十分認識 予見可能性認める
筆者:弁護士 渡部 邦昭(経営法曹会議)
事案の概要
会社は、土木建設工事請負などを業とする株式会社であり、甲は、昭和55年4月に入社し、土木工事現場の工事施工責任者や現場の指揮をする監理技術者として勤務していた。
会社は、国交省管理事務所から、平成18年7月、Gダム管理用通路整備工事(本件工事)を受注し、甲が現場代理人兼監理技術者として配置された。
平成18年8月27日、測量と図面のズレが判明したため、設計変更を検討する必要が生じ、10月10日まで工事が中断した。それに伴い、平成19年3月30日まで工期が延期された。会社と国交省管理事務所とは、通常の打ち合わせに加え、設計変更や工期についての打ち合わせを行う必要が生じた。また、国交省管理事務所は、甲に対し、平成18年12月4日以降、毎日、工事の進捗状況について報告をするよう求めるようになるなど、甲の業務が増加した。
本件工事に配置された従業員は、当初甲のみであり、その後、甲を補助するために、平成18年10月、会社のアルバイトCが配置された。さらに、同年12月13日、下請け業者として株式会社Dが入り、本件工事を二班体制で行うことになったため、同月26日、Eが配置された。…
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