報徳学園(雇止め)事件(大阪高判平22・2・12) 常勤講師を雇止め、専任教諭への登用前提で無効? 採用期待は減弱ないし消滅
常勤講師が更新は3回までとされ雇止めされた事案。専任教諭登用のための試用目的で、雇用継続の期待を認めた一審に対し大阪高裁は、1年契約で更新回数も少なく契約目的も継続雇用が前提とはいえないなど期間の定めのない契約と同視できないとしたうえで、校長の言動から登用期待は当初あったが更新回数の告知を受け減弱ないし消滅と判示。原判決を取り消した。
更新する回数告知 期間満了で終了に
筆者:弁護士 緒方 彰人(経営法曹会議)
事案の概要
控訴人は、中学校および高等学校を設置している学校法人である。平成11年4月、被控訴人は、雇用期間を1年として控訴人の美術科非常勤講師として採用され、その後も、非常勤講師として1年ずつの契約更新がなされた。
控訴人には、教育職員として専任教諭と専任講師が、臨時教育職員として非常勤講師と臨時教員があり、平成13年度まで専任教諭は専任講師から採用されていたが、控訴人は、これらの職種に加え、平成14年度より常勤講師制度を導入した。なお控訴人は常勤講師制度を導入する際、控訴人学園労働組合に対し、今後、新任教師は常勤講師として採用し、専任教諭は常勤講師から適性をみて採用するなどと説明していた。
被控訴人は、平成16年4月から控訴人の常勤美術科講師として採用されることとなった。この際、控訴人のB校長は、被控訴人に対し、常勤講師は1年の有期雇用であるが1年間頑張れば専任教諭になれる旨を述べた。その後、平成17年4月と18年4月に1年ずつ常勤講師として契約更新がなされ、その間、被控訴人は美術科の授業のほか部活顧問やクラス担任を務める等専任教諭の職務内容に準ずる職務を担当したが、専任教諭には採用されず、また平成18年度の契約更新の際には控訴人のC校長らから常勤講師契約は3回までであるとか専任教諭採用については白紙であるなどと告げられていた。
平成19年2月23日、控訴人は、被控訴人に対し、同年3月25日をもって雇用契約が終了する旨の通知を行った。…
この記事の全文は、労働新聞の定期購読者様のみご覧いただけます。
▶定期購読のご案内はこちら