末棟工務店事件(大阪地判平24・9・28) 事務所貸与し業務委託した者と雇用契約存在する? 指揮命令関係にはなかった
事務所を貸与し業務委託した個人事業者が顧客とトラブルを起こしたため、「基本給」「外注費」のうち外注費をカットしたところ、減額前の賃金を支払う雇用契約が成立するとして差額分などを求めた。大阪地裁は、契約書面や場所、時間の拘束がなく、指揮命令があったとはいい難いとして、雇用関係を否定。ただし基本給名目で支払う合意があり、請求の一部を認容した。
契約書を作成せず 時間など拘束もない
筆者:弁護士 岩本 充史
事案の概要
Yは、建設業などを目的とする株式会社である。Xは、IT関連事業を目的とするA社を退職し、平成20年4月1日から、「CLIMAX」(以下、「C」)の名称でIT関連事業を行っていた。XとYとの間で、雇用契約書、業務委託契約書その他契約内容を証する書面は作成されていないが、Yは、Xに対し、「給与支払明細書」を交付していた。
Yは、Xに対し、平成20年4月から21年1月まで、「基本給」「外注費」の名目で各15万円(合計30万円)を支払った。Yは、「基本給」からは所得税の源泉徴収を行い、雇用保険料なども支払っていたが、「外注費」については、源泉徴収を行わず、雇用保険料なども支払っていなかった。
Yは、XがYの取引先とトラブルになったことを理由に、平成21年2月および3月、Xに対する支払額を「基本給」名目の15万円のみに減額した。
本件は、Yの従業員であったと主張するXが、減額前の賃金との差額などを請求した事案である。Yは、Xを雇用した事実はなく、Xの事業に対する資金援助ないし出資をしただけであると主張して争っている。…
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