日本ベリサイン事件(東京高判平24・3・26) 役員報酬の不正引上げ見過ごした監査室長の解雇は 信頼関係を毀損し雇用困難
年俸1200万円で中途採用された内部監査室長が、取締役会の決議を経ない役員報酬の引上げを見過ごすなど、会社との信頼関係の喪失を理由に解雇された事案。一審は解雇無効としたが、東京高裁は部下との人間関係を悪化させ職務を完遂できないなど、信頼関係の毀損により室長としての雇用継続だけでなく相応の役職の幹部職員とすることも困難とし、解雇を認容。
職責十分果たせず 人間関係悪化招く
筆者:弁護士 渡部 邦昭(経営法曹会議)
事案の概要
平成17年7月6日、一審原告は、一審被告との間で、米国SOX法404条(編注、内部統制システムの整備)に関する業務について高水準の成果を上げることを約束して、役職を内部監査室長、基準年俸を1200万円とすることで採用された。
しかるに一審原告は、平成20年5月になっても米国SOX法404条対応に必要な文書化等の作業を完了させておらず、また同年5月に立ち上げられた「リバンププロジェクト」についても、一審原告の言動を理由にプロジェクト関係者からの信頼が失われフェーズ1が終了した段階で頓挫した。
平成20年4月には、D管理本部長が取締役会の承認を経ることなく執行役員や一審原告の給与引上げを行ったことを認識しながら是正のための行動を取らなかった(以下「給与引上げの件」という)。
また平成20年6月には代表取締役会長であるBの指示に反し、D管理本部長らがF社に対しA社の買収に係る旧経営陣の責任追及のための分析資料の作成等を依頼していたのを認識しながらそのことをBに報告しなかったばかりか、そのことを理由に減給処分(以下「本件懲戒処分」という)に付されて以降も同処分の効力を争うなどした。…
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