八千代交通事件(最一小判平25・6・6) 解雇無効判決受け復職、前年就労できず年休なし? 労働者に責任なく出勤扱い ★
解雇無効判決が確定したタクシー運転者が、復職後に年休を取得できず違法と訴えた事案の上告審。年休取得には前年の全労働日の8割以上の出勤が条件だが、国の通達は「使用者の責に帰すべき休業日は全労働日に含まない」としていた。最高裁は一、二審を踏襲し、無効な解雇などで会社が不当に就労を拒んだ日は出勤扱いすべきと判示。判決を受けて通達も改訂された。
係争中でも算入を 全労働日に含める
筆者:弁護士 石井 妙子(経営法曹会議)
事案の概要
Xは、Yのタクシー乗務員として勤務していたが、平成19年5月に解雇され、Yから就労を拒否された。Xは、解雇は無効であると主張して地位確認の訴えを提起し、平成21年8月17日にXの勝訴判決が確定して、同年9月4日から職場に復帰した。
その後、Xは、同月13日から15日までの3日間および翌年1月、2月に各1日、合計5日間の年次有給休暇を請求して就労しなかった。
これに対し、Yは、厚労省の通達によれば、Xの前年度(解雇係争中)の全労働日は0日であるから8割以上出勤の要件を満たさないとして、右の5日間について欠勤として扱い、賃金を支払わなかった。そこで、Xは、Yに対し、年次有給休暇権を有することの確認並びに欠勤控除による未払賃金とその遅延損害金の支払いを求めて提訴した。
争点は、年休権成立の要件である「前年度8割以上出勤」の計算に際して、無効な解雇により就労を拒否されていた期間をいかに扱うべきかという点である。一審(さいたま地判平23・3・23)、二審(東京高判平23・7・28)とも、解雇により就労できなかった日を出勤として取り扱い、Xは年休の成立要件を満たしているとした。最高裁も一審・二審を踏襲し上告を棄却した。…
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