姫路市(消防職員・酒気帯び自損事故)事件(神戸地判平25・1・29) 非番日にバイクで自損事故、飲酒運転バレて免職に 第三者に被害なく処分重い
非番日に原付を酒気帯び運転し自損事故を起こした消防職員が、懲戒免職は無効と提訴。神戸地裁は、処分の妥当性につき社会観念を推知するうえで、他の自治体の類似事例との比較は軽視できないと判示。多くは人身と物損事故で量定に差を付け、原則免職となるのは人身事故であることなどから、処分は裁量権濫用とした。約30年懲戒歴がないことなども考慮している。
他の自治体と比較 公務員間の衡平も
筆者:弁護士 渡部 邦昭(経営法曹会議)
事案の概要
甲は、昭和57年4月から姫路市消防職員として勤務していたところ、非番の平成23年8月某日に、出身高校の同窓会と二次会に出席した後に、自宅に向けて原動機付自転車を運転していて転倒するという自損事故を起こして負傷し、救急搬送された。甲はこの自損事故による負傷により鎖骨と肋骨を骨折して2カ月の自宅療養を要した。甲は、治療後に病院で警察官から飲酒検査を受け、呼気からアルコールが検出され、道路交通法違反(酒気帯び運転)となり、後日、罰金20万円の略式命令を受け、免許取消し2年となった。甲の酒気帯び運転の事実は、新聞各紙で報道された。甲は、消防司令補(非管理職)であり、それまで懲戒歴はなく、むしろ複数回の署長表彰を受けるなどしていた。
姫路市では、平成18年9月、同市職員の懲戒処分に関する基準を改正し、職員が酒酔い運転した場合の標準例を「免職ただし特段の事情がある場合は停職」とした。
甲は、平成23年8月16日に副署長から事情聴取を受け、同月18日頃に顛末書を提出した。甲については、懲戒審査請求がなされ、同年9月20日に口頭審査が開催され、同月26日付で、甲は、懲戒免職処分を受け、退職手当1695万6800円の全額支給制限処分を受けた。
甲は、本件処分(懲戒免職処分および退職金全額支給制限処分)は社会通念上著しく苛酷であり、裁量権の範囲を逸脱しこれを濫用したものであると主張して、…
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