プロッズ事件(東京地判平24・12・27) “虫食い”タイムカードでデザイナーの労働時間は データの保存記録から計算
タイムカードの記録を超えて働き、記録がない日も出勤したとして女性グラフィックデザイナーが割増賃金などを求めた。東京地裁は記録よりも客観的かつ合理的な証拠がある場合、その証拠から労働時間を認定すると判示。記録がない日の出勤は、その日最初にパソコンにデータを保存した時刻から2時間遡った時刻、退勤は最終のデータ保存時刻やメール送信時刻とした。
2時間前に出勤扱 メール時刻も証拠
筆者:弁護士 山田 靖典(経営法曹会議)
事案の概要
Xは平成15年4月、商業デザインの企画、制作、販売を営むY社に入社し、グラフィックデザインの業務に従事していたが、頚肩腕症候群・右手腱鞘炎を発症して同18年8月15日から休業し、同19年2月20日に右疾患で労働災害の認定を受けた。
同年にXは、①同16年11月から同18年8月までの時間外労働などに対する割増賃金として1581万6401円、②同額の付加金、③男女賃金差別の不法行為に基づく損害賠償として差額賃金相当額の342万3810円、④支払われるべき賞与の200万円などの支払いを求めて提訴した。
判決のポイント
労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下におかれている時間をいい、この労働時間に該当するか否かは、使用者の指揮命令下におかれているか否かにより客観的に定まるところ、使用者には労働者の労働時間を適正に把握する義務が課されていると解されることから、使用者がタイムカードによって労働時間を記録、管理していた場合には、タイムカードに記録された時刻を基準に出勤の有無及び実労働時間を推定することが相当である。ただし、この推定は事実上のものであるから、…
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