医療法人清恵会事件(大阪地判平24・11・16) 介護のため週3日のパートへ転換、1年で雇止めに 更新への期待に合理性あり
母の介護のため週3日のパートへ転換を希望した正規職員を、転換後1年で雇止めしたところ無効と訴えられた。大阪地裁は、パート化は人件費削減も目的としたうえで、職員に1年契約を反対され契約書の「雇止め予告」の文言を削除するなど、更新期待を認識しつつ契約書を調整しており、その期待は客観的にみて合理的と判示。解雇権濫用法理を類推適用し請求を認めた。
解雇権法理を類推 継続前提の契約書
筆者:弁護士 岩本 充史
事案の概要
Yは、病院および診療所の設置、経営などを目的とする医療法人である。Xは、社会保険労務士の資格を有し、昭和53年9月21日、Yに期間の定めなく雇用され、Yの本部ビルで事務職員として勤務していた者である。Xは、平成17年1月ころから、本部事務局運営グループにおいて、電子カルテなどの管理業務に従事していた。Xは、情報システムに関する業務を担当する部門(電算室)に属し、平成22年3月15日まで運営企画室副室長の地位にあった。
XおよびYは、Xからの申し出に基づき、平成22年3月18日付けで、「職員再雇用契約書」のとおり、再雇用契約を締結した。なお、Xの申し出の理由について、Yは母親の介護のためと主張する一方、Xは電算室の人員増員の要請とそれに伴う人件費の削減策の提案と主張しており争いがある。
Yは、平成23年1月5日、Xに対し、「雇い止め通知書」を送付して、Xとの本件再雇用契約を更新しなかった。
本件は、Xが、Yから解雇または雇止めをされたとして、Yに対し、①雇用契約上の権利を有する地位の確認、②賞与、解雇または雇止め後の賃金、③不法行為に基づく慰謝料などの支払いを求めた事案である。本件の争点は、複数あるが、①に関する判断を紹介する。…
この記事の全文は、労働新聞の定期購読者様のみご覧いただけます。
▶定期購読のご案内はこちら