日本通信(懲戒解雇)事件(東京地判平24・11・30) システム管理者権限の抹消命じたが応じず懲戒解雇 実害なく具体的危険性欠く
社内ネットワークのシステム管理者権限の抹消を命じる業務命令を拒んだことから懲戒解雇した事案。東京地裁は、重大な違反だが実害が生じたわけではなく、具体的かつ現実的な危険性も認められないとしたうえで、弁明機会を与えず手続的相当性を欠き解雇無効と判示。普通解雇に当たるとの主張も、是正余地がないとはいえず即日解雇の必要性や緊急性はないと退けた。
弁明の機会与えず 手続上で瑕疵あり
筆者:弁護士 石井 妙子(経営法曹会議)
事案の概要
Y社は、モバイル通信サービスの会社であるが、退職勧奨を拒否して自宅待機中のXが、社内ネットワークシステムの管理者権限を保有していることに気づき、Xを呼び出して、管理者権限を抹消するように求めた。しかし、Xが説得に応じず、業務命令も拒絶したため、Y社は業務命令拒否を理由にXを懲戒解雇した。
Xが、本件懲戒解雇は懲戒権濫用により無効であるとして、Y社に対し、地位確認などを求めて本訴を提起したところ、Y社は、これを争うとともに、反訴を提起し、ZによるXへの管理者権限の不正付与およびXによるその保持などの共同不法行為により、システムの再構築などを余儀なくされ、これにより多大な損害を被ったとして、X・Z両名に対し、連帯して約3500万円の損害賠償の支払いを求めた。
なお、Y社は、予備的主張として、本件懲戒解雇の意思表示には普通解雇の意思表示も含まれている(普通解雇①)とし、また、訴訟になってから普通解雇②の意思表示を行い、それぞれの有効性を主張した。
判決のポイント
1 懲戒解雇の無効
(1)労契法15条(懲戒権濫用法理)…
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