ニューロング事件(東京地判平24・10・11) 退職金請求訴訟で懲戒解雇事由を追加主張したが… 直接の処分理由と関連なし
退職届を提出後、競合会社との無許可取引などを理由に懲戒解雇された海外事業部長が、退職金の支払いなどを求めた。東京地裁は、約35年の勤続の功を抹消するほど重大とはいえないとして基本退職金の支払いを命じたが、功労加給金はその趣旨から請求を棄却した。懲戒事由として追加主張された資金流用などは、解雇通知の非違行為と同一性や関連性がなく採用できないとした。
勤続の功抹消ムリ 加給部分除き認容
筆者:弁護士 中町 誠(経営法曹会議)
事案の概要
本件は、原告が、被告に対し、平成17年12月5日に、同月19日をもって退職する旨の退職届を提出したにもかかわらず、被告から同月9日付で懲戒解雇されたことから、これが無効であり、退職届に基づく退職が有効であると主張して、①被告の退職金規定に基づく基本退職金1028万5223円などの支払いを求めるとともに、②被告が軽率に原告の横領行為を理由とする無効な懲戒解雇をしたことなどによって原告の名誉・信用を毀損したことが不法行為に該当し、これらの不法行為に基づく損害賠償として、財産的損害224万8080円(ドバイ首長国における弁護士費用)および精神的損害2000万円の支払いなどを求めた事案である。
判決のポイント
1 一般に、…懲戒は、労働者の企業秩序違反行為を理由として、一種の秩序罰を科するものであるから、具体的な懲戒の適否は、その理由とされた非違行為との関係において判断されるべきものである。したがって、懲戒当時に使用者が認識していなかった非違行為は、特段の事情のない限り、…その存在をもって当該懲戒の有効性を根拠付けることはできないが、懲戒当時に使用者が認識していた非違行為については、それが、たとえ懲戒解雇の際に告知されなかったとしても、告知された非違行為と実質的に同一性を有し、あるいは同種若しくは同じ類型に属すると認められるもの又は密接な関連性を有するものである場合には、…
この記事の全文は、労働新聞の定期購読者様のみご覧いただけます。
▶定期購読のご案内はこちら