淀川海運事件(東京高判平25・4・25) 労組委員長を整理解雇、一審は「人選に疑問」と無効 再建願う従業員と関係悪化
経営難から労組の執行委員長らを整理解雇した事案の控訴審。一審は、割増賃金請求訴訟を提起した者を退職させることが目的で被解雇者の人選に疑問があるとしたが、東京高裁は、委員長は他の労組が同意したワークシェアリングに反対するなど再建を願う他の従業員から協調性に欠けると認識され、業務遂行に支障が及ぶと判示。人選の合理性など整理解雇4要件を満たすとした。
一貫して非協力的 回避措置も講じる
筆者:弁護士 緒方 彰人(経営法曹会議)
事案の概要
控訴人(一審被告)は海上運送業などを目的とする会社であり、被控訴人(一審原告)は控訴人の技能職員(トレーラー運転手)であった。
控訴人は、平成13年頃以降、金融機関からの新規融資が受けられなくなっていたが、平成20年9月に発生したいわゆるリーマン・ショックによる景気減速の影響を受けて売上げが急減したため、顧客から代金の繰上げ支払いを受けるなどして、ようやく従業員の給与などの支払原資を確保できるほどの厳しい経営状態にあった。
そこで、控訴人は、顧客から事業規模に合わせた設備や人員の縮小を求められたことを踏まえ、平成21年1月15日、控訴人の保有車両を33台に減少させ、技能職員を33人とすることなどを内容とする再建計画を策定した。
その後、控訴人は、労働組合に対し複数回にわたりワークシェアリングの提案をしたり、希望退職の募集などを行ったが、余剰人員を解消することができなかったため、平成22年5月28日、被控訴人に対し、所定の退職金に250万円(約8カ月分の賃金)を加算して退職勧奨を行ったが、被控訴人はこれに応じなかった。…
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