ザ・ウィンザー・ホテルズインターナショナル事件(東京高判平25・2・27) 酒弱い部下に飲酒強要、パワハラでないとの判断は 迷惑行為にとどまらず違法
飲酒強要などパワハラを受けたとして元営業マンが、会社と元上司に損害賠償などを求めた。一審は請求を一部認め、慰謝料70万円としたが、飲酒強要は上司の立場を逸脱し許容範囲を超えていたとはいい難いとして退けた。東京高裁は、執拗に酒を強要し迷惑行為にとどまらず違法と判示し、賠償額を150万円と認容。なお、パワハラと精神疾患との因果関係は否定した。
慰謝料額を上積み 疾患とは関係なし
筆者:弁護士 山田 靖典(経営法曹会議)
事案の概要
Xは平成20年3月10日、ホテル運営などを目的とするY社に入社し、営業本部の係長としてA次長の部下となった。
Xは、Aより①同年5月11日午後9時頃、出張先の居酒屋で飲酒を強要され、②翌12日夕方の帰路で体調が悪いと断ったが、レンタカーの運転をさせられ、③同年6月16日、「何でこんなに長く休んでいたんだ、今後、精神的な理由で休んだらクビにするぞ」と脅され、④同年7月1日、帰社命令に反し自宅へ直帰したため、午後11時すぎ、2度にわたって携帯電話の留守電に怒りを露わにする録音をされ、⑤同年8月15日午後11時すぎ、留守電に「辞めろ! 辞表を出せ! ぶっ殺すぞ、お前!」などと録音され、⑥同年8月18日から平成21年1月上旬まで、隣席から頻繁ににらみつけられるなど威圧的な態度をとられ、⑦本来はAが処理すべき業務やXに処理させても意味のない業務を押しつけられ業務を過重なものにされたと主張し、パワーハラスメント(パワハラ)により精神的苦痛を受け、適応障害を発症したとして、Aには不法行為責任、Y社には不法行為責任、使用者責任または労働契約上の職場環境調整義務違反に基づき、AとY社に連帯して慰謝料1000万円の支払いを求めた。
これに対し、一審判決(東京地判平24・3・9)は、Xの主張するパワハラのうち、民法709条の不法行為として評価し得るものは前記⑤だけであると認定し、AとY社に連帯してXの精神的苦痛に対する慰謝料70万円の支払いを命じたため、X、Y社とも控訴した。…
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