損害賠償求償(X社)事件(名古屋地判平24・12・20) 社内暴力で会社が全額賠償、加害者への求償限度は 故意の不法行為で減額不要
従業員間の暴行傷害事件で会社と加害者に連帯して損害賠償の支払いを命じた判決を受け、全額を支払った会社が、加害者へ求償できるか権利の確認を求めた。加害者は、損害の公平な分担の見地から減額を主張。名古屋地裁は、事件の予見は不可能で、人員配置に過失はないとしたうえで、事件は故意の不法行為で求償権の範囲を制限する事情はないとして請求を認めた。
使用者に過失なし 最終責任は行為者
筆者:弁護士 石井 妙子(経営法曹会議)
事案の概要
X社に勤務していたYは、寮の厨房においてAと仕事をしていたが、Aの発言が自分を馬鹿にしていると感じて激高し、襟首をつかむなどの暴力行為に及んだ。Aは転倒して後頭部を打撲し、Yは傷害罪で略式命令を受けた。
その後、Aは、X社およびYを被告として、不法行為および使用者責任に基づく損害賠償請求訴訟を提起し、「X社・Yは連帯してAに対し131万余円およびその遅延損害金を支払え」との判決がなされ確定した。
X社は、Aに遅延損害金を含む全額158万余円を支払ったが、民法500条を根拠に、Aに代位してYに強制執行すべく、Yに対し民事執行法33条1項、27条2項に基づく承継執行文の付与の訴えを提起した(執行文を付与するのは裁判所書記官だが、訴えの当事者は原告債権者、被告債務者となる)。
一方、Yは、使用者であるX社が被用者であるYに損害賠償または求償を請求することは信義則上許されないとして、民事執行法35条に基づき請求異議の訴えを提起した。
Yは、X社が従業員の適切な管理を怠り、また、X社のAへの対応の不備などからAへの損害賠償金額が増加したのであり、信義則上、Yに対する求償権行使は制限されるべきだと主張した。…
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