JR東海事件(東京地判平25・1・23) 酒気帯びで新幹線運転士の乗務を拒否し減給措置に 判断は合理的だが処分過重
新幹線の運転士が、酒気帯びの基準値を下回る状態で乗務不可とされ、それに伴う減給処分の無効などを訴えた。東京地裁は、酒気帯び状態の認定と乗務不可の判断は合理的だが、安全を最優先すべき職務上の義務を考慮しても違反行為の態様は悪質とはいえず、過去の処分例と比べ重きに失し、懲戒権濫用で無効と判示。昇格の不利益などはなく慰謝料の請求は棄却した。
基準値より下回る 懲戒権濫用で無効
筆者:弁護士 牛嶋 勉(経営法曹会議)
事案の概要
原告は、新幹線運転士業務などに従事し、労働組合分会の書記長を務めていた。乗務点呼時に助役から酒臭を指摘されたうえ、呼気中アルコール濃度測定によるアルコール検査の結果、1回目に1リットル当たり0.071mg、2回目に0.07mgの各測定値が検知されたことなどに基づき、酒気帯び状態と認定されて乗務不可とされ、平成23年2月16日付けで平均賃金1日分の半額に相当する9409円の滅給処分を受けた。
原告は、①本件数値が乗務不可とされる基準値の0.1mgを下回っており、酒気帯び状態には当たらず、懲戒事由はない、②被告が組合嫌悪の意図の下、原告に弁明の機会を付与することなく、他の処分例と比較して過重な本件減給処分をすることは、懲戒権の濫用に当たると主張して、減給処分の無効確認、未払賃金9409円および慰謝料150万円などの支払いを請求した。
判決のポイント
たとえ、原告の顔色等の外観やろれつ等の言動に問題がなかったとしても、少なくとも管理者3名が原告の酒臭を知覚し、本件アルコール検査の結果、原告の呼気中アルコールの存在を示す本件数値が検知された上、原告自身、前夜の飲酒を自認していた本件状況の下においては、被告において、原告が酒気帯び状態にあると認定したことは相当であり、…
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