音楽之友社事件(東京地判平25・1・17) 就業規則改訂し退職金廃止、労組との協約の効力は 契約内容の一部として存続 ★
就業規則に定める退職金制度などを廃止したのは労働協約に反するとして、組合員らが改訂の無効を訴えた。東京地裁は、労働協約は解約の意思表示から90日経過すれば効力が生じるが、長年にわたって労働条件を規律し、失効後も労働契約内容の一部として存続すると判示。仮に規則変更に同意しても、協約に反する労働条件は無効で、個別の労働契約では廃止できないとした。
長年にわたり規律 個別同意あっても
筆者:弁護士 中町 誠(経営法曹会議)
事案の概要
会社が、①退職金制度の廃止、②「年払常勤手当」制度の導入、③定期昇給の廃止、④住宅手当の廃止などを内容とする就業規則改訂案を策定し、組合に提示したが同意を得られなかった。
そのため就業規則を上記のとおり改訂しその内容を実施したため、年齢給・勤続給の昇給を実施せず、平成23年4月以降、配偶者手当、住宅手当、財形貯蓄に関する利子補給分の支払いをしなかった。そこで、この不利益変更の措置は労働協約などに反するとして、組合および組合員らが訴訟を起こしたものである。
具体的には原告組合が被告に対し、①平成18年2月21日付け覚書で引用する同年3月15日現在の労働協約の規定に抵触する平成23年4月1日施行の就業規則および関係諸規程の各条項の無効確認を求めるとともに、②主位的に、本件労働協約および別紙「原初労働協約一覧表」記載の各労働協約の各条項が効力を有することの確認、予備的に、当該条項の履行をそれぞれ求め、原告組合を除く原告らが被告に対し、③本件労働協約の関係条項を労働契約の内容とする労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、④平成20年4月以降の年齢給・勤続給の昇給分および各種手当、これらに対する遅延損害金の支払いを求めた事案である。
判決のポイント
(1)本件覚書の締結の際、原告組合と被告との間で本件労働協約の内容はその記載のとおり確定しており、両当事者間の共通認識とされていたと認めるのが相当である。…
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