伊藤忠商事事件(東京地判平25・1・31) うつ病の休職期間満了で退職措置、就労可能と提訴 総合職の採用で復職先なし
躁うつ病の休職期間が満了し退職となった従業員が、仮に従前の業務はムリでも配転可能な業務を検討すべきとして地位確認を求めた。東京地裁は復職の可能性を検討すべき職種は、雇用されていた「総合職」と判断。総合職のいずれの職種にも対人折衝等の複雑な調整に耐え得る精神状態が必要だが、そこまで回復したとは認められず、社会復帰も困難として請求を斥けた。
治癒寛解に至らず 対人折衝堪え難い
筆者:弁護士 渡部 邦昭(経営法曹会議)
事案の概要
甲は、会社に平成8年4月1日、総合職として雇用され、勤務していたが、平成16年秋頃から体調を崩し、平成17年5月17日から同年10月5日まで精勤休暇を取得した後、欠勤しA病院に入院し、双極性障害(躁状態とうつ状態の病相を繰り返す精神疾患)に罹患していると診断された。退院後の平成19年4月6日から同月23日まで精勤休暇を取得し、その後も病状は一進一退を繰り返した。
そこで、甲は会社から、平成19年4月24日以降の休職を命じられ、会社の就業規則による休職期間満了日は平成22年1月23日(甲の休職期間は2年9カ月)であった。
甲は、休職期間中、会社に対し復職を申し入れ、会社はこれを受けて、甲のトライアル出社を開始することとし、甲は平成21年11月30日から会社に出社し、指定された業務に従事した。しかし、会社は「これ以上のトライアルの継続は困難で、継続しても再発の可能性大」などの健康管理委員会(人事部長、健康管理室長、産業医などで構成)の審議結果により、甲の復職を不可と判断し、甲の休職期間満了日に雇用契約は終了したので退職とした。そこで、甲は、雇用契約の地位の確認を求めて会社を訴えた。
本件の争点は、甲について…
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