「働き方改革」へ判例再検証 職場に役立つ最新労働判例 連載1000回特別企画(下) 下級審編

2017.09.13
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役員個人も責任負う 「認定基準」と別判断も 企業の安全配慮義務違反

 「働き方改革実行計画」のうち、「長時間労働の是正」「兼業・副業の促進」「高齢者の就業促進」に関する下級審判決を、解説者のコメントとともに紹介。大手広告代理店の新入社員の過労自殺もあり脱長時間労働の流れが加速する中、判例では過労死に対して役員や上司ら個人の責任を認めた事案が続出した。兼業と労災補償の関係では、すでに賃金合算の可能性に言及しており注目と指摘されている。

長時間労働と過労死

◆積善会(十全総合病院)事件(大阪地判平19・5・28)

 【事案の内容】麻酔科の女性研修医として勤務していた者が過重労働によりうつ病を発症し、自殺したことにつき、遺族が損害賠償を求めた事案。病院が適切な措置を取らなかったとして安全配慮義務違反が認められた。

 【判決の特徴】労働時間の長さのみをもって直ちに病院における業務が過重なものであったということは困難であり、癲癇の羅患あるいは癲癇発作により思いどおりに業務ができないことへの苛立ちや嫌悪感がうつ病発症にかなり影響していたと考えられるとし、自殺を示唆する言動があったことから、非常に深刻な事態になっていたことを気付くべきであったのに、適切な対処がなされなかったとして、病院の責任が肯定され、同時に癲癇の既往症があったことから、損害額の30%を過失相殺したもの。(渡部)

◆大庄ほか事件(大阪高判平23・5・25)

 【事案の内容】入社4カ月で死亡した居酒屋店員の遺族が、会社や取締役らに対して損害賠償を求めた。入社以来毎月80時間を超える長時間の時間外労働が認められたもの。初任給に80時間分の残業代が組み込まれていたことも話題に。

 【判決の特徴】長時間労働に起因する過労死・過労自殺について、企業の安全配慮義務違反の責任を問う裁判例は数多くあるが、本件は、会社のみならず代表取締役その他の役員個人についても、会社法429条1項に基づく責任があるとした点が特徴である。固定残業代制度の評価に関する部分など、疑問も残るが、その点はひとまずおいて、企業の経営陣が、長時間労働の是正に取り組む必要性を痛感させられる判例だった。(石井)…

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平成29年9月11日第3128号14面 掲載
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