TRUST事件(東京地裁立川支判平29・1・31) 「妊娠中は建設現場困難」と派遣登録勧めて退職扱い 妊婦の退職合意認められず
妊娠が判明し現場作業が困難となった測量士が、会社に勧められて系列の派遣会社に登録したところ、合意なく退職扱いされたとして慰謝料等を求めた。東京地裁は、退職届の提出がなく、会社は約半年にわたり説明をしていないことから、退職の合意を認める合理的な理由は存在しないとした。産後に復帰する意図を有し、休職の合意であったと認定している。
手続きや説明なく 産後復帰まで休職
著者:弁護士 石井 妙子(経営法曹会議)
事案の概要
Xは、平成26年10月14日付で、Y社の正社員として採用され、建築測量、墨出し等の業務に従事していたが、翌年1月21日、妊娠していることが判明した。
Xが、代表者および直属上司に今後の仕事の相談をしたところ、現場業務の継続は難しいとの話になり、代表者は、Xに対し、関連の派遣会社への派遣登録を提案した。Xは、派遣先の紹介を受けて、2月6日に1日、就労したがその後は派遣就労することなく、9月6日に出産した。Xは、退職届は提出しておらず、6月10日にY社から退職扱いになっている旨を知らされ、7月、Y社に対し、自主退職していない旨の見解を示した。
Xは、Y社に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、民法536条2項に基づく賃金の支払いを求め、また、本件は実質的に見て妊娠を理由とした解雇であり、均等法9条3項、4項に違反する不法行為であるとして、慰謝料並びにこれらに対する遅延損害金の各支払いを求めて提訴した。
判決のポイント
1 退職合意の有無…
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