ヤマト運輸(賞与)事件(仙台地判平29・3・30) 非正規のみ査定で賞与減、格差不当として差額請求 計算式の違い不合理でない
契約ドライバーが、勤務状況が同じ正社員と賞与の計算式が異なるのは不合理と訴えた。基本給等に成果査定率として40~50%が乗じられていたが、100%として差額を求めた。仙台地裁は、期待される役割、昇進や転勤など人材活用の仕組みが異なるうえ、正社員の賞与には、将来への動機付けや奨励の意味合いを持たせると考えたことは不合理とはいえないとした。
転勤や昇進面に差 将来への期待考慮
著者:弁護士 牛嶋 勉(経営法曹会議)
事案の概要
被告会社には、無期雇用契約のマネージ社員と1年以内の有期雇用契約のキャリア社員が存在し、キャリア社員である原告が、マネージ社員との間で賞与の算定方法が異なる不合理な差別があり、原告の個人成果査定が不当に低いことが労働契約法20条に反するなどとして、賞与の差額等の支払いを求めた。
本判決によれば、マネージ社員には、他の社員をとりまとめ、管理ができる社員としての役割が期待され、職務内容の変更や役職者に昇進する可能性があり、また、業務上の必要により、転勤を命ぜられることがあり、転居を伴う職場異動は原則として行わないものの、役職配置上や経営上特に必要とする場合にはこの限りでないとされ、担当変更、転勤、役職・役割変更があり得る。他方、キャリア社員には、与えられた役割の中で、個人の能力を最大限発揮して個人や店の業績に応じて1年毎に処遇・契約される社員としての役割が期待され、転勤はなく、職務内容の変更や役職者への昇進もない。格付、等級、号俸、業務区分が同じ場合、マネージ社員とキャリア社員の給与(基本給の時間単価)は同じであり、キャリア社員の月間労働時間数が長いため基本給はキャリア社員の方が高い。各種手当の支給基準は、同じである。…
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