学校法人早稲田大阪学園事件(大阪地判平28・10・25) 定昇停止や号俸切下げ退職金減、定年後に差額請求 基本給見直す高度の必要性
定年退職した教職員が、新人事制度導入で基本給が引き下げられたとして、得られたはずの退職金との差額約300万円を求めた。大阪地裁は、経営状況悪化で解散も視野に入る中、賃金、退職金の変更に高度の必要性が認められるとした。生徒数の増加は見込めず、学校は定昇停止、手当削減、希望退職の募集等したが効果は限られ、賃金体系を改革するほかなかったとした。
資金底突くおそれ 生徒増も見込み薄
著者:弁護士 岡芹 健夫(経営法曹会議)
事案の概要
学校法人Yは、平成25年5月1日付で就業規則を変更し、新しい人事制度を導入した(以下、「本件変更」という)。本件変更により、退職金が減額となる者も出た(経過措置あり)。
原告ら5人はYの教職員で、A~Dは平成27年3月31日に定年退職し、Eは平成28年3月31日に定年退職した。
大阪府府民文化部私学・大学課が作製した財務分析において、私立高校の退職給与引当率の平均値は、平成22年度は69.4%であったのに対し、Yは92.3%であり、日本私立学校振興・共済事業団の「自己診断チェックリスト」でも、Yの帰属収支差額比率、人件費率、補正人件費依存率、積立率、流動比率はほぼ全て低評価であった。
Yは平成23年12月および24年2月に、平成22年度の決算内容において帰属収支が約4.7億円の赤字であること、同26年度には手元資金が尽きる見通しであること、同25年度に2億円の資金不足が発生すること、同24年度の緊急避難的措置の内容、賃金制度改革案などを説明した。また、Yは、組合の要求書に対し、号俸給表の上限を切り下げること、一般職員に対して資格制度を導入すること、希望退職の募集を行うことを回答した。Yはそれ以降、組合に対し、平成24年度の昇給を停止すること、人事制度を改革すること、新人事制度の導入に際し、給与および退職金について経過措置を付することなどを提案した。…
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