トーホーサッシ事件(福岡地決平23・7・13) 雇用継続制度導入前の再雇用者を「新基準」で雇止め 周知されず効力は及ばない
雇用継続制度の導入前に再雇用された者が、同制度の基準を満たさず雇止めされ、賃金仮払い等を求めた。福岡地裁は、同制度の労使協定は周知されておらず、雇止めの要素として考慮できないと判示。解雇権濫用法理を類推適用し、就労能力が衰えたとか、会社が解雇回避努力を行っても雇用継続できないとはいえず、雇止めに合理的理由があるとは認められないとした。
解雇権法理を準用 合理的な理由なし
筆者:弁護士 石井 妙子(経営法曹会議)
事案の概要
Xは、51歳でY社に入社したが、60歳定年を迎える直前、平成21年9月16日に労働組合に加入し、24日に定年退職して、25日から再雇用された。組合との確認書により、雇用期間は6カ月ごとの更新、雇用継続は最大65歳到達日までとされていた。
Y社は、翌年3月24日、本件雇用契約を期間6カ月として更新し、一方、7月には従業員代表者と高年法9条2項の規定に基づく協定を締結し、「雇用継続制度」を導入するとともに、再雇用基準として、意欲、健康状態、過去3年間の勤怠、技能水準、経験・資格、懲戒処分の有無等を定めた。
Y社は8月19日、Xに対し、次回更新をしない旨通知した。Xは、雇用継続の合理的期待があり、解雇権濫用法理が類推適用されるから雇止めは無効であるとして、地位保全および賃金仮払いの仮処分を申請した。
決定のポイント
Xは、定年まで9年間就労してきたものであること、組合と、定年後再雇用に関して確認書を締結していること、定年後期間6カ月の本件雇用契約を締結し、更新もされていること、これに高年法9条1項…の定めの存在も併せ考えると、Xには、少なくとも64歳に達するまでの雇用継続の合理的期待があったということができる。…
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