大庄ほか事件(大阪高判平23・5・25) 居酒屋店員が過労死、取締役らへ賠償命じた判断は 生命や健康守る義務を懈怠
2012.01.30
【判決日:2011.05.25】
入社4カ月の居酒屋店員が心不全で死亡した事案で、一審は会社と取締役らに損害賠償を命じた。大阪高裁も一審を踏襲し、会社の安全配慮義務違反を認めたうえで、取締役らは会社法に基づき、労働者の生命・健康を損なわないような体制を構築すべき義務を負うと判示。月100時間を超える長時間労働を許容するなど任務懈怠があったとしてそれぞれに賠償を命じた。
会社法の責任負う 過重労働抑制せず
筆者:弁護士 牛嶋 勉(経営法曹会議)
事案の概要
一審原告らの子であるKが平成19年4月に控訴人会社に入社し、会社が運営する店舗で勤務していたところ、同年8月、急性左心機能不全により死亡したことにつき、一審原告らは、Kの死亡の原因は会社での長時間労働にあると主張して、会社に対しては不法行為または債務不履行(安全配慮義務違反)に基づき、会社の取締役であるA、B、C、Dに対しては不法行為または会社法429条1項に基づき、損害賠償を請求した。
第一審(京都地判平22・5・25=本紙第2805号)は、会社と取締役らにそれぞれ賠償を命じた。本件は、その控訴審である。
判決のポイント
使用者の労働者に対する雇用契約上の安全配慮義務という法的局面においては、単に使用者が行政法令を守っていさえすれば、安全配慮義務違反にならないというものではない。控訴人会社としては現行認定基準をも考慮にいれて、社員の長時間労働を抑制する措置採ることが要請されており、…
この記事の全文は、労働新聞の定期購読者様のみご覧いただけます。
▶定期購読のご案内はこちら
ジャンル:
平成24年1月30日第2858号14面 掲載