国・川崎北労基署長事件(東京地判平23・3・25) うつ状態から復職後に過量服薬で死亡したが労災? 症の影響で“薬物依存”に
抑うつ状態による休業・復職後に、処方薬を過剰摂取して死亡した従業員の遺族が、労災不支給の取消しを求めた行政訴訟。東京地裁は、月100時間を超える残業の心理的負荷は強度で、個体側の要因も認められないことから業務起因性を認定。精神障害の影響下において薬物依存となり、過量服薬に及んで死亡したもので、発症との相当因果関係も肯定して請求を認容した。
発業務起因性認める 過重な労働が原因
筆者:弁護士 岡芹 健夫(経営法曹会議)
事案の概要
A社はコンピューターソフトウエアの研究開発、システムインテグレーション・サービスの提供等を目的とする株式会社である。Bは、平成14年4月にA社に雇用された者である。
Bは、平成15年4月より、大手放送局の地上波デジタル放送オペレーションシステム開発に関するプロジェクトに所属し、所属後は時間外労働時間が月100時間以上に増加し、同年9月まで継続的に長時間労働に従事していたが、Bの在任中、プロジェクトには増員がなかった。また、Bの職場では、休憩施設がなく(十分ではなく)、仮眠をとる者は自席でうつぶせになるなどしていた。なお、プロジェクトは、性質上、失敗が許されないと考えられていた。
平成15年9月には、Bによる仕事内容、職場環境への不満、愚痴の頻度が増え、同年10月には年休および代休の取得、遅刻、早退が増えてきた。同年11月には、A社産業医紹介の医療機関より、不安・抑うつ状態との診断を受け、同年11月10日に遡って1回目の休業となり、平成16年2月11日までに及んだ。
平成16年2月12日、Bは再出勤し、業務軽減措置を受け業務を再開し、同年4月27日には産業医の意見を受けて業務軽減措置を解除されたが、喫煙所で傾眠するなどの様子が頻繁にうかがわれていた。…
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