長谷工ライブネット事件(東京地判平23・6・15) 出向中の顧客情報漏洩や競業活動に「先」が賠償請求 労働契約の付随義務に違反
出向先の不動産賃貸会社から顧客情報を持ち出し、競業他社の取締役に就任した元従業員らに、出向先が損害賠償を請求した。東京地裁は、出向元の就業規則上の守秘義務や競業避止義務について、仮に出向先に規程がなくても「労働契約上の付随義務」であり、出向先に対しても負担すると判示。不法行為に当たり、競業他社の使用者責任も認めて連帯での賠償を命じた。
禁止規程なくても 転職先も連帯責任
筆者:弁護士 緒方 彰人(経営法曹会議)
事案の概要
原告は、不動産賃貸の管理受託等を業とする会社である。原告は、平成21年4月1日、ニチモコミュニティ株式会社(その後商号変更、以下、「長谷工コミュニティ」という)から、オーナー物件の賃貸・建物管理事業の譲渡を受けた。
被告Cは、長谷工コミュニティの従業員であったが、本件事業譲渡に伴い、原告に出向して、テナントとの賃貸借契約の終了に伴う原状回復工事や敷金精算等に関連する業務に従事した。
被告Cは、平成21年6月22日に長谷工コミュニティに対し同年8月24日付で退職願いを提出する一方で、同年6月14日と26日に原告で賃貸・建物管理を行っていたオーナー物件(以下、「ニチモ物件」という)のオーナーの住所・連絡先等が含まれているエクセルファイル(以下、「本件情報」という)を自宅アドレスに送信するとともに、同年7月8日に被告会社が設立されるのに伴い同社の取締役に就任し、また8月19日には被告会社がニチモ物件のオーナーに対し「賃貸管理のご提案」と題する提案書を送付すること等に関与した。その結果、平成21年4月1日当時、原告が管理していたニチモ物件は76物件あったが、同年12月末にかけて14物件についての賃貸・建物管理契約が解除され、代わりに被告会社がオーナーとの間で賃貸・建物管理契約を締結した。…
この記事の全文は、労働新聞の定期購読者様のみご覧いただけます。
▶定期購読のご案内はこちら