コーセーアールイー事件(福岡地判平22・6・2) 新卒者の内々定取消し、違法な解雇と損害賠償請求 採用への期待権侵害を認容 ★
採用内々定を取り消された学生が、労働契約は成立しており違法解雇などとして損害賠償を求めた。福岡地裁は、内々定を正式な内定までの間、企業が新卒者をできるだけ囲い込むものに過ぎないと規定し、労働契約の成立には当たらないとしたが、経済が悪化する危惧から内定直前に急いで取り消したもので、採用への期待権を侵害したとして100万円の支払いを命じた。
慰謝料100万円に 労契は未成立だが
筆者:弁護士 中町 誠(経営法曹会議)
事案の概要
原告は、平成21年3月にH大学を卒業する予定であったところ、平成20年4月ころ、不動産売買などを行う被告の会社説明会に参加し、適性検査や面接試験を経て、同年5月28日、被告の最終面接を受けた。
被告は、原告の採用内々定を決定し、同月30日ころ、原告に対し、「採用内々定のご連絡」と題する書面および入社承諾書を送付し、原告は、同月31日付けで入社承諾書に記名、押印して返送した。
本件内々定通知は、被告の人事事務担当であるBの名義で作成され、提出書類である入社承諾書の提出期限が記載され、「※正式な内定通知授与は平成20年10月1日(水)を予定しております」と記載されていた。なお、入社承諾書は、被告代表取締役宛で、「私○○は平成21年4月1日、貴社に入社しますことを承諾致します」という内容であり、○○に名前を入れ、末尾に、日付、現住所、氏名を記載して、押印するというものであった。ところが被告は、原告に対し、同年9月29日付け「採用内々定の取消しのご連絡」と題する書面を送付した。
そこで、原告が、内々定の取消しは違法であるとして、債務不履行または不法行為に基づいて、被告に対し、損害賠償を請求した事案である。…
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