東京大学出版会事件(東京地判平22・8・26) 勤務態度悪いと再雇用拒否、対象者の基準巡り提訴 職務上必要な能力あり無効
定年退職した編集者が、勤務態度を理由に、再雇用基準の「通常勤務ができる能力」を欠くとして再雇用を拒否されたため地位確認を求めた。東京地裁は、「能力」には協調性も含めるが、職務遂行に支障を来す服務規律違反はなく、職務上必要な身体・技術的能力を減殺するほどの協調性の欠如は認められないとして、解雇権濫用法理を類推適用し再雇用拒否を無効とした。
解雇の法理を類推 協調性考慮するが
筆者:弁護士 渡部 邦昭(経営法曹会議)
事案の概要
㈶東京大学出版会(以下、TK法人)は、東京大学における研究とその成果の発表を助成し、または学術図書の刊行、頒布、内外学術資料の蒐集および学術講演等の事業を行い学術の振興文化の向上に寄与することを目的とする財団法人である。
甲は、昭和48年7月にTK法人との間で雇用契約を締結して、平成21年3月31日にTK法人を定年退職した者であり、在職中、一貫して編集局に所属し、社会科学・人文科学の分野の学術書・教科書または教養書の編集に携わった。
甲が、定年後の再雇用を希望する旨の意思表示をしたところ、TK法人は拒否した。しかし、甲は、本件再雇用拒否の意思表示は正当な理由を欠き無効であるから、平成21年4月1日付で再雇用契約が締結されていると主張して、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めて訴えを提起した。
本件は、甲が、TK法人の再雇用契約社員就業規則(以下、再雇用就業規則)第3条に定める「再雇用者として通常勤務ができる意欲と能力がある者」といえるか、そして、「能力」を計るに当たり、協調性や規律性等の勤務態度も考慮できるかが争点となった。…
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