パナソニックエコシステムズ事件(名古屋地判平23・4・28) 派遣が正社員へ専門知識伝授したら契約打切りに!? 信義則に反し慰謝料命じる
派遣先の正社員へ専門知識の伝授を命じられた派遣社員が、派遣契約を打ち切った派遣先へ慰謝料等を求めた。名古屋地裁は、派遣先は信義誠実の原則に則って対応すべき義務があると判示。派遣終了の意向が示唆されたことはなく、自社社員が育成されるや派遣料金の高さを理由に突然契約を打ち切ったのは不法行為と認定。派遣先との黙示の雇用契約の成立は否定した。
代替者育成後すぐ 継続の期待を侵害
筆者:弁護士 岩本 充史
事案の概要
本件は、Yで派遣労働者として就労していたXらが、X1につき平成21年3月31日をもって、X2につき同年5月31日をもってそれぞれ派遣元から雇止めにされたが、Yとの間で黙示の労働契約が期間の定めのないものとして成立していたものであり、Yによる雇止めは解雇権の濫用であって解雇は無効であるとして、Yに対し、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認等をそれぞれ求めた事案である。
また、Xらは、Yが業務の種別が、専門26業務に当たらないにもかかわらず、これに当たるように偽装して期間制限をはるかに超えて長期間にわたって同一の業務に継続して従事させながら、派遣元を通じて契約更新を拒絶しているもので、何ら客観的な合理的理由なく不当な解雇で、多大な精神的苦痛を与えられたとして、それぞれ慰謝料300万円および遅延損害金を請求した。
本件の争点は多岐にわたるが、「X1に対する不法行為の成否」についてのみ紹介をする。
判決のポイント
労働者派遣においては、…派遣先においては派遣労働者に対して契約上の責任を負うものではないけれども、派遣労働者を受入れ、就労させるにおいては、…
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