フェイス事件(東京地判平23・8・17) 業績不振で中国撤退、総経理に採用した出向者解雇 職種限定契約でやむを得ず
中国現地法人の社長として採用、出向を命じられた従業員が、業績不振による中国撤退を理由に解雇され地位確認を求めた。東京地裁は、職種を特定されて雇われたもので職種が消滅すれば解雇もやむを得ないと判示。年俸減額を拒み配転困難なこと、2カ月の解雇予告期間中も月100万円の報酬を支払うなど手続的、経済的に配慮がなされ、解雇には合理的理由があるとした。
減俸拒み配転ムリ 高額の報酬支払う
筆者:弁護士 石井 妙子(経営法曹会議)
事案の概要
Xは、中国から日本に留学した後、日本企業に就職した。その後、ヘッドハンティングによりY社に転職をして、入社から2カ月後には、Y社の中国現地法人であるA社に総経理(社長に相当)として出向した。しかし、約5年後、Y社は、A社の赤字が続いたことから、中国市場から撤退することとし、平成21年7月、Xに、A社に残っても良いしY社に帰任しても良いが、Y社にはXの能力を発揮できる仕事はないと告げた。Xは明確な返事をしなかった。
同年10月19日、Xは、Y社から同年12月末日で辞めてもらいたいとの通告を受け、退職を拒否したところ、Y社は、12月末日をもって解雇する旨の通知書をメール送信した。
Xは、解雇無効を主張して訴えを提起し、これに対してY社は、「中国の現地法人を経営させる」という職種に限定してXを採用したところ、業績不振のため撤退せざるを得なくなり、Xの担当職務が消滅しているため、解雇には客観的に合理的な理由があり、社会通念上も相当であると主張した。…
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