京濱交通事件(横浜地裁川崎支判平22・2・25) 就業規則へ基準定めて再雇用拒んだが手続に不備? 過半数代表者の選出が必要
就業規則で再雇用基準を定めたタクシー会社の乗務員が、再雇用拒否は無効と労働契約上の地位確認を求めた。横浜地裁川崎支部は、事業主が労使協定締結の努力をしたにもかかわらず協議が調わないときは、就業規則に基準を設けられるところ、合意した一部の労組以外へ十分な説明をしたとは認められないうえ、過半数代表者も選出されていなかったことから無効とした。
制度説明は不十分 協定結ぶ努力怠る
筆者:弁護士 緒方 彰人(経営法曹会議)
事案の概要
Yは、一般乗用旅客自動車運送事業を主たる目的とする株式会社であり、本社のほか本社と同一の場所に小倉営業所、その他に2営業所を設置している。
Xは、平成8年10月25日、Yに雇用され、小倉営業所でタクシー乗務員として勤務した。
平成18年10月21日から実施された本件就業規則29条は、定年制について、以下のとおり定めている。「定年は満60歳とし、定年による退職日は、誕生日以降最初に到来する各月の20日とする。なお、乗務員は2月度は18日とする。ただし、…本人が希望し、かつ、高年齢者雇用安定法(以下、高年法)9条2項に基づく労使協定に定められた本件再雇用基準に該当する場合は、65歳まで…嘱託又は定時制として再雇用する」。
Yは、Xに対し、平成20年1月15日、Xが同年2月7日に満60歳となることから、本件就業規則29条に基づき、定年退職となる旨の定年通知書を送った。なお、Xは、本件再雇用基準のうち、乗務数基準、営収基準、走行キロ基準をいずれも充足していなかった。Xは、Yに対し、同20年2月7日の団体交渉において継続雇用を希望する旨を伝えたところ、Yは、Xを再雇用することを拒否した。…
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