房南産業事件(横浜地判平23・10・20) 作業ミスで事故起こした荷役作業員の再雇用を拒否 裁量権逸脱とはいえず妥当
石油製品を運搬するタンカー荷役作業員が、60歳到達後の再雇用を拒否され、会社に雇用契約上の地位確認を求めた。横浜地裁は、再雇用の要件を満たさないとしたことが、裁量を逸脱したものとはいえないと判示。作業手順違反を繰り返した結果、漏油事故を発生させており、再雇用基準の「専門的な知識・技術を有している」という要件を充足していないとして請求を棄却した。
知識や技術が不足 手順違反繰り返す
筆者:弁護士 牛嶋 勉(経営法曹会議)
事案の概要
原告は、平成6年3月に会社と労働契約を締結し勤務していたが、平成21年3月12日に定年退職を迎えた後も再雇用制度に基づいて労働契約が継続していると主張し、会社(被告)に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、賃金・賞与等の支払いを求めた。
会社の平成17年制定の就業規則には、定年を60歳とし定年後の再雇用に関する定めはなかったが、会社は、平成18年3月31日、労基署に対し就業規則の変更を届け出て、再雇用制度を導入した。しかし、会社は、労使協定の基準を満たした者を再雇用する本件新旧対照表(限定的再雇用制度)とともに、全面的再雇用制度を創設する旨の就業規則を併せて提出していた。
原告は、平成20年9月16日に再雇用申出書を提出したが、会社は再雇用を拒否した。
判決のポイント
被告が、変更後の就業規則として届け出て、それ以降就業規則として適用する意思を有していたのは、限定的再雇用制度を設ける旨の本件新旧対照表記載の規定であり、一方で、…
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