郵便事業(身だしなみ基準)事件(神戸地判平22・3・26) 長髪やひげ理由に人事評価下げられ損害賠償を請求 身だしなみ基準に違反せず
郵便局員が、長髪やひげを一律禁止する「身だしなみ基準」を理由に人事評価を下げられたのは違法として損害賠償を求めた。神戸地裁は、基準は労働者の利益や自由を過度に侵害しない限度で拘束力があり、顧客に不快感を与える内容に限り適用すると判示。髪などは整っているとしたうえで、違反を前提とした再三の指導は違法として慰謝料などの支払いを命じた。
「不快感」与えない 誤った指導繰返す
筆者:弁護士 石井 妙子(経営法曹会議)
事案の概要
Xは、口ひげ、あごひげを生やし、また髪を延ばして後頭部で束ねた状態で、Yの貯金事務センターで勤務していたが、平成17年8月、A郵便局に配転となった。
Yは、同月、身だしなみ基準を定め、髪形について、女性は「長い髪はまとめる」、男性は「長髪は不可」、ひげは「不可」とした。Xの着任後、上司は、Xが上記基準に反しているとして、月1回以上、翌年度は2カ月に1回程度、ひげを剃り、髪を切るよう指導した。
ところで、Yにおいては、人事評価結果が2回連続で70点以下となった場合、職能調整額(Xの場合月額5400円)が支給されない扱いとなっており、Xは、平成17、18年度の評価が70点以下であったため、14カ月間計7万5600円が支給停止された。また、Xは、「特殊」業務(書留等、特殊郵便物の区分業務)の「夜勤」勤務のみを命じられた。
Xは、低評価に基づく賃金カットおよび職務担当に関する差別、ひげを剃るよう執拗に求められたことを違法であるとして損害賠償を求めた。…
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